ほかの人とかぶらない個性や、華奢なデザインを楽しめるなど、今にわかに注目が集まっているヴィンテージウォッチ。TiCTAC と幻冬舎がお届けする新企画「今、ほしいのは、ヴィンテージウォッチ」では、毎回ゲストを招き、時間を経ても変わらないヴィンテージウォッチの魅力について綴っていただきます。第一回目はモデルの神山まりあさんにご登場いただきました。
今回、神山まりあさんが選んだのは、カルティエの「マスト・タンク」と「マスト・コリゼ」の二本。
01. カルティエ「マスト・タンク」
創業者のルイ・カルティエが第一次世界大戦中に戦車の轍(わだち)から着想を得たとされる、レクタンギュラーケースが特徴の「マスト・タンク」。「タンク」はいまだに現行シリーズとして残っている、高い人気を誇るカルティエの代表的な名シリーズです。
02. カルティエ「マスト・コリゼ」
古代ローマの円形競技場からその名が付けられた「マスト・コリゼ」。ケースとベルトを繋ぐダブルラインが特徴の華やかなシリーズです。
「女性の品は手にあらわれるのよ。」
母が私にいつも言う言葉。
品のある女性でいるように、と教育を受け早32 年。果たして私が母の期待に添えているかはちょっと謎だけど、この母の言葉がいつも頭から離れません。小さい時は「手を美しくしろ」という意味がわからなかった。
なんだろう?手洗い・うがいのことかしら。消毒? そもそも品ってなんだ。
あの時はちんぷんかんぷんだった教えも、今になるとなんて大事なことだったのだろうと気づくことばかりです。
女性の美しさは手にあらわれる。
なるほど。
所作の美しい人であれ。そして人によく見られる手先を綺麗に保て、ということなのでしょう。手先、つまり爪のお手入れをきちんとしている人は細やかな心配りができるように見えるのに加え、細部までケアできる心の広さまで感じます。そして何よりも清潔感は手先・爪の状態に影響されます。
所作・清潔感も大事ですが、もう一つ大事なものがあります。
それはアクセサリー、そして時計です。
アクセサリーはその日の気分で、ファッションと共に遊ぶことを楽しむべき。
毎日コロコロ変えたっていいじゃないですか。時には冒険したアクセサリーなんてして周囲を驚かしたりして。
でも、時計は違います。
母は手の美しさを語る時にこう言うのです。
「まりあ、時計はいいものをつけなさい。時計と靴は常に美しく保ちなさい。値段のことを言っているのではないの。時計は人となりが出るものです。大事な時計を大切に使い続けなさい」
この言葉のおかげで、私は時計にこだわりができました。
そのこだわりとは、母から譲り受けたヴィンテージの時計しか身につけない、ということ。
私にとって大事な時計とは、大切な人が一緒に時を刻んだ時計。
この高価な時計は大切に扱われ、そして過去から今までずっと人に寄り添っていました。
それってなんだかすごくロマンチックな気がするんです。
愛された時計を譲り受けたことで、自分ももっと大切に扱わなきゃという気持ちも芽生え、自然と所作が美しくなる。決して後ろに進まない時計の針は、未来だけを向いて、でも古きを守りながら進む。私はそれに品と美しさを感じずにはいられませんでした。
今回、TiCTAC でお借りした二つの美しいヴィンテージの時計。
この二つも誰かに愛され、大切に守られてきたものでしょう。
生きてきた時間が長い分、新品とは違った魅力がある。威厳にも見える美しさはヴィンテージ時計の虜になってしまう理由かもしれません。
その威厳は、ファッションを邪魔することは決してなく、むしろ品を漂わせてくれる。
オフィシャルなシーンでもカジュアルなシーンでも。ヒールを履いたり、ビーサンを履いたりしてもいい。どんなシーンでも「キチンと感」を演出してくれます。
私が大好きなオールホワイトコーデにもスパイスを効かせてくれる。
時計がある、ないだけでこんなにもイメージが変わり、気分の持ちようまで変わってしまうものなのですね。
私がこの二つの時計を持っていたら、大事に大切に使い、そしていつか誰かに譲り渡すでしょう。いい時計は所有できません、誰かに渡すものなのです。まるで高価なバトンのように渡されていく時計は、誰のもとに留まることなく存在し続ける。それがヴィンテージ時計であり、その魅力なのだと思います。
(神山まりあさん プロフィール)
モデル
1987 年東京生まれ。2011 年に「ミス・ユニバース・ジャパン」のグランプリを受賞。2015 年に結婚、翌年男児を出産。雑誌『VERY』(光文社) をはじめファッション誌などで活躍中。インスタグラム (ID:mariakamiyama) で見せる、飾らない明るいキャラクターも大人気で、フォロワーは15 万人超。初の著書『神山まりあのガハハ育児語録』(光文社) も好評発売中。
毎回ゲストを招いてヴィンテージウォッチについて綴っていただく「今、ほしいのは、ヴィンテージウォッチ」。第二回目のゲストはテレビにも出演されている人気のエッセイスト、犬山紙子さんにご登場いただきます。お楽しみに!